視察報告:紫波町 オガールプロジェクトについて


地方創生、という言葉は今日、広く国民に浸透してきた。政府も自治体も挙って地域ブランドや道の駅など地域活性化事業を支援している。しかし、はたしてその事業がうまくいっているのかというと、実態はそうでもないというのが現実のようだ。木下斉氏の「地方創生大全」を紐解くと、これらの事業の多くは成果をあげていないという。新たに作った地域ブランド特産品を補助金で整備した道の駅に並べてみても期待したほど売れない、地方都市に大型の箱もの施設を作っても入居するテナントがなく空室だらけ、といった話は枚挙にいとわない。

なぜこのような事態が起きているのか。地方自治体からすれば、高齢化と住民減少になんとか歯止めをかけなければ行政サービスの維持ができなくなるという危機感がある。だから、これまで税金を投入して事業に失敗してきた過去の様々な事例は知っているけれども、かといって手を拱いてもいられない、という事情がある。こうした中で生み出されてきた地方創生の失敗の数々は悲劇の落とし子だ。現場で汗をかく職員の労苦の汗は、悲鳴のようなものかもしれない。

しかしそうはいっても、一方では地方において行政の実力は圧倒的であることに疑いはない。高齢社会に突入して落ち目とはいえヒト・モノ・カネのリソースすべてが地域最大級だ。我々はここでなぜ失敗したのか、成功するにはどうすべきかを学ぶ必要がある。

今回の視察において、紫波町のオガールプロジェクトはPPP官民連携の事業開発における要点を我々に教えてくれた。地域活性化のため、リソースを活用し、事業化する。そこに行政手法ではなく、民間手法での事業計画の推進を取り入れている。事業化の目的は同じでも、行政と民間ではアプローチの仕方には大きな隔たりがある。

Think Big, Start Small, Fail Quickly, Scale Fast.

オガールプロジェクトには図書館と併せて民間企業が入居するテナント施設も重要だった。行政サイドは事業化の中身をオガールプラザ(株)に任せることで、行政組織として民間企業との関わり方に一本の線を引いている。またプラザも建設資金調達を行うに際してテナントを先に確保することで事業計画を具体化し、金融機関からの調達を容易にした。周辺家賃のバランスをみて設定されたテナント家賃から算出して、当初の計画よりもかなりコストを抑えることが必要となった。そのために3階建ての計画を2階建てに建設計画の規模を縮小し、また店舗もスケルトン渡しにすることや、天井を省略することで建設費を大幅に圧縮した。

行政が計画する施設でこのような計画の運びかたは非常に考えにくい。Think Big, Start Small, Fail Quickly, Scale Fast.というビジネスの格言がある。大きく考えて、安く開始し、課題を早期に解決し、早く領域を拡大する。プラザ建設はまさに民間企業の手法である。

オガールプロジェクトの面白いところは、もうひとつある。紫波町はこの施設から家賃を受け取ることができる点だ。土地は紫波町が従前に28億円余りで購入して放置され続けた10.7haの駅前の一等地である。行政が施設建設しても家賃は取れないが、オガールからは家賃収入があるのだ。

また海外を参考にしたという市民の憩いの場、自由につかえる広場は、建物と建物のあいだに配置されている。そこには建物同士をつなぐたくさんの小道と、ちょっとした小屋やBBQのかまどがあり、土日には家族連れなどで非常ににぎわっているという。私たちが訪れた平日でも、ここにいると人の姿をたくさん見かけることができた。広場に面したカフェの前に置かれたチェアで楽しそうに会話を弾ませる姿をみて、ひとが集まれる屋外空間はただ空いているだけではなく、ほかの機能と一体となることで有効に活用されることを痛感した。

北名古屋市においては都市計画公園の整備が遅れており必要とされているが、地域住民は都市計画公園の活用を具体的にどんなふうに考えているだろうか。オガールプロジェクトのように目的のある施設と自由に使える空間の中間に広場があって、自分の行動の範囲が広場にり拡大されることがイメージできる。単独での施設から、一体的な活用へ。市民にとってより大きな価値ある空間とできるかもしれない。

オガールプロジェクトに計画された施設がすべてオープンした本年、地場産品を中心に扱っているマルシェが施設経営の屋台骨に育っているという。地元の人たちが野菜や果物などを買いに来るそうだ。プロジェクトとしてはここでひと段落することになるようだが、入居しているテナント経営の状況はどうなるだろうか。オガール=おがる(育つ)という方言らしいが、名前の通り、これからも紫波の目玉として成長してもらいたい。

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