文部科学省が小学校英語教育を2020年にスタートする、という方針を決めました。北名古屋市ではそれに先立って、この4月から小学校3年生から英語教育をスタートさせることにしています。
ちなみに北名古屋市はこれまでも英語教育に力をいれてきました。本年度、市内中学校3年生の英検3級程度の力があると認められた生徒の割合は57%にもなっています。4年ほどまえには18%程度でしたから、3倍強の急成長を遂げています。
北名古屋市、すごいでしょ!
小学校の「担任」のあり方もあわせて考えること!
現在、北名古屋市の小学校はクラス担任制をとっています。中学校になると教科担任制に切り替わり、小学校と中学校ではずいぶんと教え方も違うんだなと感じた記憶があります。英語教育が小学校3年生から導入されるにあたり、この担任制と小学校の英語教育について、できるだけわかりやすく状況を整理してみたいと思います。
目的がない議論は、居酒屋で酔っぱらいオヤジに議論吹っ掛けられたのと同じ。
そのためにはまず大前提として、議論の目的をハッキリさせておかなければなりません。学校教育のレベルアップとひとくちに言っても、いろんな角度でものを見ることができます。
- (英語に限らず)教育の質の向上
- 教員の多忙化解消・負担軽減
- 教育費(北名古屋市単独負担の人件費)への配慮
クラス担任制のメリット
クラス担任の先生が国語・算数・理科・社会の主要教科はもちろんのこと、体育や図工、音楽などの教科も教えます。つねに同じ児童を見ることになるため、子どもの得手・不得手を観察することが簡単にできます。課題の達成度や他の教科とのバランスなどがわかり、得意な教科で褒めることを通じてこどものやる気を引き出してやることがしやすい、というメリットがあるといわれています。
教科担任制のメリット
専門的知識を必要とする度合いによってはクラス担任制よりも、教科担任制にしたほうがよいのではないかと言われている教科があります。授業準備に時間が必要となる理科、また教え方のコツが分かりやすさにつながる算数、その他にも音楽や体育などです。先生方が授業準備のために掛ける手間も1教科だけですみます。不得手な教科を教えるよりも得意な教科を教えるほうが先生方の負担も軽くなります。すでに部分的に教科担任制が導入されています。特に音楽は小学校で別の先生に教えてもらった記憶がある、という方もお見えになるのではないでしょうか。
英語教育はクラス担任か教科担任のどちらがいいか?
英語教育についてはまちがいなく教科担任制による授業が効果的でしょう。小学校教員免許を持っていても英語はこれまで科目になっていませんでしたから、今のクラス担任がそのまま教えるというのは現実的ではありません。特に英語の4技能のうち「聴く」「話す」を教育することが難しい。その点ではできれば英語を母国語かそのレベルで扱える外国人で、人格もすぐれ、第2外国語の教育・児童教育について学位や経験のある方に指導していただくことが望ましいと思います。もしそんないい人がお知り合いの中にお見えでしたら他市町村に採られる前に北名古屋市へぜひ紹介ください。ちなみにALT採用時の人物評価は北名古屋市のALTも参加して行っているそうです。
北名古屋市では平成30年度から小学校3年生から英語教育を開始
先ほど書いたような素晴らしい人材はそうそう見つかりません。しかし授業は早く始めたいので平成30年度にスタートする。これを両立させるために教育委員会は現実的な問題解決を図られました。急には人材確保ができませんから、教員免許(英語)の資格を所持している先生を確保することにして不足を補い、北名古屋市では平成30年度から小学校3年生の英語教育をスタートさせます。これまでALTとして小学校を担当してくださった5名の方に加えて、教員免許など英語教育を任せる5名、併せて10名で北名古屋市内の10の小学校に1人ずつ配置することになりました。
教員の多忙化解消や負担軽減にはつながるのか?
教科担任制では授業準備のために掛ける手間も1教科だけですみます。一方で子どもたちの様子をしっかりと把握するには、他の教科担任との情報交換をマメにすることが必要です。このあたりは教科担任のメリットを活かして、デメリットをいかに解消することを考えて実行するか、という問題だと思います。また小学校6年生から中学校1年生へつなぐため、中学校の先生が小学校で訪問授業する児童と教師の交流機会を創出することを考えてもいいと思います。これは英語教育に限らず、小中学校の連携を教科担任ごとに指導内容など連携しやすくなるメリットがあります。
副担任制だけではなく、子どもの問題には多層的にアプローチすること
副担任制度は、あくまで補助教員として生徒に細やかに目を配ることが目的です。教育の質、教員の多忙化解消にはつながりません。副担任制度をやめて、コミュニティスクールやシチズンシップ教育などを通じて、子どもたち同士で支えあうこと、子ども自身が自分で課題と向き合える力を育てるほうがいいと思います。英語教育をすすめるためにALTの雇用拡大をしてきました。子どもたちにも人気のあるALTの先生の代わりは副担任には務まりません。中3ギャップという問題へは副担任だけでなく、地域・保護者・友人・アフタースクール教室、そして青少年育成など、子供を取り巻くすべての社会から多層的にアプローチをすることができます。これまでも北名古屋市は「いじめの早期発見・早期対処」を行ってきました。
教科担任制度の課題は何があるの?
高学年(4~6年生)向きの制度
小学校の低学年(1~3年生)では、教科指導よりも周りの環境になれることが大事。友達、先生、学校に成れるためにも、いつも同じ先生が教室にいて安心できる環境を生徒に与えたほうがよいと考えられています。そのため兵庫県では低学年だけクラス担任制にすることを考えらえているとか。なるほどなるほど。
英語教育の質を左右する良い教員の採用はどうしているか?
質のいいALTの確保のため、北名古屋市による直接雇用での待遇向上
英語指導のために独自予算で教師を確保するため、北名古屋市の教育費用の負担が増加します。当然ですが先生のお給料を支払う必要があります。生活するのがやっと、というような低い賃金で働いてもらうわけにはいきません。いい先生を直接雇用している北名古屋市は、ちゃんと給与で家族を養って生活できる水準の賃金を払っています。なぜこの点を強調するのか、というと北名古屋はALTの待遇を改善することで、教育の質を確保しようとしているからです。
一般的にALTはJETプログラムや派遣会社を通じて自治体に雇用されています。彼らにはALTとして働くための研修がなされていますが、もともと教育が専門だという方は少ないです。
そして経済的な面も問題になります。派遣契約や請負契約で企業から派遣されてきたALTの場合、行政からの委託契約料から会社が3割程度抜いて講師に渡す給与としています。そうなるとアパートを借りて生活している外国からきたALTの先生には、生活していくのに経済的なゆとりができません。そのため平日夜間や週末は英会話教室や飲食店などでアルバイトしているというケースが多いのです。結局、休みがなくて疲れ切ってしまい、モチベーションも下がり、授業の質も上がらない、という悪循環に陥いることになります。
ALTの先生が早ければ数か月、長くても数年程度で辞めていくのには経済的な問題が原因という面も大きいのです。
ALTによる授業運営には、教員免許を持った人の助手扱いという法規制の課題
ALTとはAssistant Language Teacherです。日本語にすると「外国人指導助手」です。あくまで助手であり補助する、といういことになっているので教員免許状を持つクラス担任が教室にいなければならない、という制限がかかっています。あらま。
本来は授業をALT1人で運営してもらって、クラス担任はこの時間を他の授業準備や事務などに充てられれば、教員の多忙化解消にもひとつ役に立つことにつながります。
この制限を緩和することが望ましいと考えている事例はたくさん見つかります。例えば、「小学校英語における特別非常勤講師制度の教授可能領域の拡大を国際戦略特区で求める意見書」が長野県から内閣府の国家戦略特区ワーキンググループに提出されています。この方法の他にも、特別免許状制度、という方法も考えられます。弾力的な制度運営ができれば現場は楽になると思うのですけれども。
北名古屋市での小学校英語教育と教科担任制について
あくまで私の私見ですが、北名古屋市がめざす学校教育にはもっと明確に特色を出していただきたい。英検3級程度が現時点で全国でトップクラスといっても、すでにはるかに先行している横浜の5ラウンドシステムの事例があります。もちろんこれからの英語教育を発展させていくために調査することは大事です。これはすぐやってほしい。そのうえで、高学年からの教科担任、しかも英語など一部科目に限って小中連携を図りながら進めるのがよいと思います。また教科担任を設置するほどもクラス数がなく、そもそも教科担任をする教員が足りないということも。
しかしながら、それはやはり枝葉末節だと思います。これから北名古屋市がどんなまちになるか、どんなまちにしたいか、これを市民の方と共有していくこと。それを根づかせること。どんな教育をするのか、なにを目指すのか。これを市民の方に共有していただくことが重要だと思います。その土台のうえに制度設計していったほうが理解が進みますからね。
ベッドタウンから、文化と教育の誇れる、文教都市へ!
参考
クラス担任制/教科担任制についての参考情報
コメント