北名古屋市の将来予測から人口減少と高齢社会への対応はいずれ不可欠となる中長期的な課題である。一方で東北地方はここ10年間の人口減少と高齢化率の上昇が著しく、まさに現実の課題として取り組んでいる真っ最中である。今回の視察においては東北地方の中では古くから城下町として栄えた弘前市が非常に力を入れて取り組んでいる政策立案・調査研究機関での取り組みを調査し、いずれ来る時代に備えて参考にするべく視察訪問を行うこととした。
弘前市 ひろさき未来戦略研究センター(以下、HIF)とは
人口減少問題をはじめとする様々な政策課題や地域課題について調査研究を実施し、市役所全体の政策形成能力の向上を図ることを目的として設置された機関である。設置に関しては市長マニフェストによるものであるとのことであった。その点からも機関の運営委員会の構成は、市長・副市長(2名)が含まれており首長の意思が反映されやすい組織である。また運営委員会にはスーパーバイザーである東京都市大学の涌井史郎教授が参加されていることから、弘前以外の他市町村の事例をより広く取り入れ、各種研究対象を決定するにあたっての判断材料が豊富になるよう構成されている。また公募による市民研究員もHIFに参加されていることから、市民意識の取り込みも組織的にビルトインされていることがうかがわれた。
HIFの組織的特徴のもう一つとして、政治・行政の中心である東京に東京事務所を設置している点である。人口減少に直面している弘前市にとって人口減少対策に関する取り組みは非常に重要な事業である。東京事務所はこの移住者受け入れの部分を担当しており、東京を中心としたエリアで弘前市への移住促進や婚活、弘前出身者のネットワーク化などに取り組んでいるとのことであった。
HIFの活動内容について大きくは、経営計画の進行管理、次期総合計画の策定である。ここで特徴的であるのは調査研究を通じてのマンスリーレポートの発行である。弘前市の経済動向の報告のほか、月ごとに様々なテーマでの報告書を発行されている。ほかにもビッグデータやオープンデータの研究、ローカルベンチャーの育成、産業イノベーション、先端医療の導入促進や先端医療人材育成など、HIFはかなり広範囲なテーマを持っている。多岐にわたる活動を通じて、職員の政策形成能力の向上はやがて将来に大きな力になるであろうことが予想される。
このような取り組みを弘前市経営戦略部であえて行わず、HIFを組織したことについてお尋ねしたところ、「子どもたちの笑顔あふれるまち弘前」を将来都市像とした弘前市経営計画を、地域を1つの経営体として捉え「オール弘前」で地域づくりを推進するという理念の実現するため、であるとのことであった。右肩下がりの人口推計に政策誘導で少しでも歯止めをかけるこの取り組みの今後の推移を見守りたい。
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