地域おこし協力隊の制度は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移動し、生活の拠点を移したものを、地方公共団体が「地域おこし協力隊」として委嘱。隊員は、一定期間、地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民生活の支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る総務省の取り組みである。その活動の経費を特別交付税により財政的に支援するものであり、活動経費、隊員等の起業、隊員の募集に補助がでる制度である。この地域おこし協力隊制度には地域要件があり「生活の拠点を3大都市圏をはじめとする都市地域から過疎・山村・離島・半島等の地域等の条件不利地域に移し、住民票を移動させた者であること」となっている。もちろん都市部である北名古屋市は地域おこし協力隊を作ることができない。
それならばなぜこの事業を視察するのか、ということに私は答えなければならない。視察の目的は、よそ者である隊員がどうやって地域住民の活動の中に参加していくのか、という点だ。地域おこし協力隊の隊員は、市民協働に新規参入しようとしている新参者として例えるとわかりやすいかもしれない。あるいは都会で地域活動から疎遠になった人として考えてもらってもいい。地域活動に参加してもらうようにするには、受け入れる地域の側がどんな面に気を付けて受け入れていったらいいのか。これを学びに行った。
地域おこし協力隊隊員は「さざ波を起こす人」だ
地域おこし協力隊の活動に対する花巻市のスタンスは「隊員は良きパートナーであり、コミュニケーションを十分に取り、地域で孤立させないようにフォローを行う」「隊員のやる気を尊重する」「あれがダメなどは極力言わない」ということだった。総務省の研究員らの評価によると、地域おこし協力隊隊員は「さざ波を起こす人」だそうだ。かれらの活動のバックアップとして行政の協力が大きな力になるし、そこに変化が生まれる。半官半民という立場での活動だから協力隊員の活動範囲は公益に限らず、共益や私益の部分での活動も許されている。そして隊員には活動地域内に後見人がつくようになっており、この後見人は面接時から同席するなどして、地域への紹介窓口となるキーパーソンだ。
また採用は8月に行っているそうだが、地域に溶け込むためにも夏祭りの手伝いが効果的であるとのことだった。いっしょに汗をかいた仲間として、地域の人たちとの一体感・親近感につながっている。地域活動のためには、地域のなかに仲間をつくること、そのためにも地域の行事などで一緒に汗をかくことが重要なことだと改めて認識した。
他にも地域おこし協力隊として活動する内容が法律の面で問題になりそうなことをチェックすること、特別職公務員として採用することで副業が認められること、公用車を私的利用することを認めるなど、地域おこし協力隊の運営についてのポイントもご丁寧に教えていただいた。隊員の生活基盤に寄り添ってのそうした取り組み方は、市民協働の課題解消に向けて有効な手法として考えられる。
最後に「イーハトーブ」とは宮沢賢治が故郷の岩手県をモチーフとしてつくった、彼のなかにある理想郷を指す造語である。隊員のなかには地域おこし協力隊の活動を通じて、この地域に定住した人や結婚した人もいると聞いた。彼らにとってのイーハトーブになるよう、これからの活動の発展を願いたい。
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